女性ユニオン東京では、団体交渉の末、36協定(時間外労働に関する労働者代表・会社間の協定)を結んだ事例を会員を対象としたミーティングでシェアしました。
女性ユニオン東京の機関誌『ファイト!』VOL321(2024/9/28号)と『ファイト!』VOL317(2024/4/24号)へ寄稿された事例共有会と事例について当事者からの寄稿を転載します。
36協定とは
1日8時間・週40時間を超えた時間外労働や法定休日の労働をする場合に使用者(会社側)と労働者の間で締結し、労働基準監督署長に届けなくてはならない協定です。
使用者は原則として決められた労働時間や労働日(所定労働時間・所定労働日)を超えて労働者を働かせることはできません。
労働基準法は1日8時間・週40時間(=8時間x5営業日分相当)の法定労働時間や、原則毎週1日の法定休日の基準を定めています。やむを得ず法定労働時間を超えた時間外労働や法定休日に労働させる場合には、就業規則等で定めることに加え、あらかじめ労使協定を締結し、所轄の労働基準監督署長に届け出なければならないことになっています(労働基準法第36条)。
この労使協定のことを、労働基準法第36条に基づき36協定(サブロク協定など)と呼んでいます。
使用者はあらかじめ会社と労働者の過半数が加入している場合はその労働組合か労働者の過半数を代表する者とのあいだに36協定を締結し、労働基準監督署に届け出ておかなければなりません。
(ポケット労働法より)
『ファイト!』VOL321(2024/9/28号)
36協定を結んだ事例共有会の感想
従業員代表選挙に果敢に取り組んだAさんに、36協定のこと、従業員代表者のことについて事例ミーティングをしました。
Aさんの勤務先は10名ほどの会社で、 技術職で20年も勧めています。
中小企業であり、残業代の概念がなく「残業代を支払うが、基本給から固定残業代を差し引 」などのとんでもないトラブルが発生したため、Aさんは一発奮起をして36協定を会社 と結ぶことにしました。
Aさんの会社はほぼ縁故従業員ばかり……の中での立候補!従業員代表者にはなれなかったものの、たった1人での挑戦。大奮闘でした。
みんなの勤務先の36協定は?
さてミーティング参加者の方々の勤務先では36協定はどのように結んでいるのでしょ
うか?
「大学では残業が増える入試の時などに 36協定を結んでいる」
「会社の掲示板に(従業員代表と36協定結 びました)お知らせが貼ってあった。 会社が法律通りに決めているものと思っていた」
「残業するなと言われて いる。 残業することになったら、次の日前日残業した時間分遅れて出社したりしている。36協定がないってこういうことになるんだなって思った」
「昔、 春闘前などに 従業員代表の人が社員の意見を一人ひとり聞いて取り まとめていて大変だなと思った」
「決算の時だけ36協定 を結び、締結したら従業員代表解任になる会社もある」
「強い組合では、1か月ごとに必要最低限の残業時間だ 36協定を締結する」
などなど・・・また、従業員代表が どんなことをどれくらい決定することが出来るのか、任期も会社によって違うみたいですし、解らない、ピンと来ないことがまだまだあります。 引き続き情報交換して いけたらと思います。
『ファイト!』VOL317(2024/4/24号)
団体交渉の末、36協定を結ぶ!
昨年末の第一回団体交渉の翌日に総務の男性社員Aさんから36協定についてメールが届きました。
【36協定の確認について】 ・36協定締結にあたり労働者代表が必要になった為、労働者代表選出の日程を調整します。立候補大歓迎です。 ・36協定の説明はしません。各自調べてください
残業の概念が存在せず、時間外労働に対する賃金が支払われていなかった我が社で、いよいよ36協定を締結する通知です。このメールの宛先に休職中の社員のアドレスが含まれていなかったため、私は立補の可能性は低いとしても賛否の意思表示はできるよう、休職者にも周知が必要と返信しました。
このメールの後、労働者代表の立候補者募集はいつだろうと思いながら二ヶ月が過ぎたN月X日の昼前に【36協定の代表者選出について】というメールが送信されました。
【36協定の代表者選出について】 ・送信者の総務の男性社員Aさんが立候補すること ・立候補または他者を推薦する者は当日中(N月X日)に申し出ること ・総務の男性社員Aさんの他に適任者がいないと思う場合は信任する旨を3営業日後までに返信すること
音沙汰なしだった代表選出の話しがやっと出たと思ったら、最初のメールに対し当日中に立候補を申し出ろ、とはなかなかの暴挙です。私は立候補を決めていましたが、他の社員は考える時間が必要だと思い、代表立候補の表明と同時に回答には最低一日は猶予が必要と返信しました。これに対し総務より、立候補締め切りを翌日に延期すること、36協定締結は5営業日後との回答が来ました。
団体交渉チームのみなさんにもすぐにメールで相談したところ、「36協定」について説明をした後に、労働者代表するよう求めるように、とのアドバイスがありました。使用者からの説明を求めたところ立候補締め切りを更に4営業日後ろ倒し、投開票を立候補締め切り日の5営業日後とする回答。36協定については厚生労働省のPDF付のみで十分でない上、労働者代表についての説明は一切ありませんでした。
緊急で団体交渉チームzoomミーティングを開き、36協定提案内容を投票前に公表すること・36協定締結の日程を明示すること・投票方法、選挙権の範囲の確認を会社に求めました。
会社より協定書案の公表と投開票日締結を更に2営業日後ろ倒しにとするとの回答。再度団体交渉チームのzoomミーティングで、協定内容について要求内容の検討を行いました。
私自身初めて見る36協定届であり、何度読み返してみても、どこから手をつけてよいのか全くわからず、チームのみなさんに助けを求めました。とにかく締結まで時間がありませんから気ばかり焦るのですが、団体交渉チームのみなさんにアドバイスをいただきながら、ひとつひとつ疑問点を質問し、締結日の朝にも確認事項をメールしました。
予定された投開票日の正午に開票が行われ、代表は総務の男性社員Aさんに決まりました。36協定締結にあたり労働者代表は労働者の意見をまとめる必要がありますが、聞き取りや話し合いをするのではなく、この日の朝全員に送信した確認事項のメールを無視して、話し合いの必要が無いと思う者は挙手するようにと求めました。これに対して、話し合いは必要なプロセスであり、する・しない』を多数決で決めることはできないと即座に抗議して、労働者の意見集約の時間を確保しました。
後日示された会社の最終版提案内容は労働者の要求を満たしているとは思えなかったため、もう一度労働者全員に36協定とは『使用者が労働時間や休日について労基法で定めている最低基準を下回る例外を提案し、労働者がそれを許容すること』ですから、その内容、労働者の利害の得失、労働者の不利益の程労働者の要求などを十分に考慮して判断しなければならないことを再度確認し、本当にこの内容で締結してよいかを問いました。社員全員から返信をもらい、『この内容で一度やってみて問題があれば来年話し合い検討する』と全員一致で決定しました。
会社から示された最終版提案内容で削除された要求に関しては、『その都度協議の上、個別対応する』との回答であったため恣意的運用とならないかを懸念しています。また、メールのやり取りの中で口頭で確認したような記述もあり、後になって言った言わないにならないよう、36協定届に記載されない部分に関しては労使確認事項として書面化を労働者代表にお願いしました。
36協定の成立年月日は令和6年3月22日、社員へは4月8日に周知されました。約一ヶ月間の孤軍奮闘でへとへとになりましたが、団体交渉チームのみなさんの的確なアドバイスがあったので頑張れました。本当にありがとうございました。しかし私がやったことは本来なら労働者代表が率先してやるべき仕事だったとも思います。今後、来年の締結時まで実態がどうであったか、再考が必要な点がないかを見ていきたいです。